
ブラックモーリー飼育の基本!コケや油膜はどれくらい食べる?
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ブラックモーリーってどんな魚?
熱帯魚を飼っているかたなら、一度は見たことがあるというくらいポピュラーな熱帯魚の1つ、ブラックモーリーを見ていきましょう。
ブラックモーリーの最大体長

ブラックモーリーはモーリーの改良品種で、 最大体長は10cm程度になります。メスの方がやや大きくなりますが、セルフィンモーリーとの交雑タイプのブラックモーリーも大きくなります。モーリーとセルフィンモーリーは違う種類ですが、とても近い種類でもあるので交雑もします。
むしろ市場に出回っている個体は、そのほとんどが交雑種だと思って間違いありません。体の大きさは水槽の広さや飼育密度にも左右されます。
ブラックモーリーの寿命

ブラックモーリーの 寿命は4年程度です。継続的に適切な環境下で飼育をすると仮定すれば、寿命は主に水温と水換えに左右されます。
一般的に、水温が高いと成長は早く、老いも早くなります。また、水換え頻度が多いと成長は早く、老いも早くなる傾向にあります。
水換えに使う水は、一晩汲み置いた溜め水を使うことが1番安心です。溜め水を使うことで、水換え時のブラックモーリーのストレスを軽減し体力消耗を抑え、結果的には、寿命が延びることにもつながります。
/ブラックモーリーは出産をする魚

ブラックモーリーは、グッピーと同じ卵胎生魚です。卵胎生魚は、メスのお腹の中で卵が孵化し、体外に産まれてくる時には稚魚で産まれてきます。
丸まって産まれてきた稚魚は、水槽内に放たれると共に、ピンッ、と体を伸ばし泳ぎだします。
そして稚魚はすぐに餌を食べるので、生きたブラインシュリンプベビーや冷凍ブラインシュリンプベビー、ベビーフード(ドライフード)などを与えます。
ブラックモーリーはコケ取り・油膜取りに重宝する?

ブラックモーリーは雑食性で何でも良く食べ、水面に浮かんでいる 油膜や水草についた糸状コケ、時には藍藻(シアノバクテリア)なども食べてくれると言われています。
しかし、餌の好き嫌いがあるので、普段与えている餌との兼ね合いで、コケや油膜を食べない場合も意外と多くあります。
ブラックモーリーが水面で口をパクパクしている時は、油膜などの餌を食べている場合がほとんどですが、エラ病などで酸欠気味になっている場合も鼻上げしてエラをパクパクする症状が見られるため、注意して観察することが必要です。
また、つつくようにして食べる行為が、他の魚に向かう場合もあるので、混泳の際は少し注意して観察しましょう。
/モーリーの品種・類似種
次は、ブラックモーリーを含めたポエキリア属である、モーリーの仲間について見ていきましょう。
ブラックモーリー
ブラックモーリーは金魚の黒出目金のような真っ黒い体色をしているのが特徴です。ヒレの小さいモーリータイプと、ヒレが大きいセルフィンモーリーとの交雑タイプがいます。
シルバーモーリー
シルバーモーリーはモーリーの改良品種ですが、こちらもブラックモーリー同様、ヒレの大きなタイプもいます。モーリーの改良品種はほとんどが交雑種であると考えて間違いありません。
ダルメシアンモーリー
ダルメシアンモーリーは、犬のダルメシアンに似た色模様をしています。プラチナ(白)体色に黒のブチ模様が魅力的なモーリーです。こちらもシルバーモーリー同様の改良品種です。
バルーンモーリー
バルーンモーリーは可愛らしい丸い体型が特徴的です。基本的にはセルフィンモーリー(ベリフェラ)の改良品種ですが、交雑によってモーリー系改良品種の血も入っています。
セルフィンモーリー
セルフィンモーリーは、モーリーのなかでも大型になり、ヒレも大きく優雅な見た目をしています。産まれる稚魚も大きめなため、育て易いのは良いポイントです。
ライヤーテールモーリー
ライヤーテールモーリーは、尾ビレの上下の先端が伸びているのが特徴です。基本的にはモーリーの改良品種ですが、やはりこの品種も交雑しているので、ライヤーテールをしたブラックモーリーや、バルーン体形のものもいます。
/ブラックモーリーの飼育法
ブラックモーリーはポピュラー種でありながら、実は、意外な弱さを見せることもあります。ブラックモーリーの飼育の基本を解説します。
水温・水質
ブラックモーリーは水温22~28℃、水質は中性~弱アルカリ性の、やや硬水を好みます。
ブラックモーリーの元になっている原種のモーリーやセルフィンモーリーは、淡水域から汽水域にかけて生息していることから、少し塩分のある水の方が調子良く飼い易くなる傾向があります。それもあって、慣らしさえすれば海水での飼育も可能です。
やや硬水の水質に調整するためには、昔から牡蠣殻(カキガラ)やサンゴ砂を少量使用する方法がありますが、それと併用して リバース・リキッド・マリン・リバース・グレイン・マリンなども使用するのがおすすめです。
水槽・フィルター
飼育可能な水槽サイズとしては、30cmキューブ水槽(30×30×30)のような小型水槽からでも可能ではありますが、現実的には45cm規格水槽(45×30×32)、できることなら60cm規格水槽(60×30×36)以上のものが良いです。
フィルターは上部式フィルターが無難ですが、水槽サイズ次第では外掛け式フィルターや外部式フィルターなど、濾過能力が低くなければ何でも構いません。
スポンジフィルターの併設もおすすめです。餌を食べる量も多く、繁殖力も旺盛な熱帯魚なので、余裕を持った水槽環境が好ましいと言えます。
/照明
照明は、観賞のことも考えて明るめの照明を使用しましょう。ブラックモーリーは植物質性の餌も好むため、水槽内にコケが生えるくらいの環境の方が好都合なのですが、コケのことを踏まえて考えても明るめの照明が向いています。
もしも意図的にコケを生やしたい場合は、照明の点灯時間を通常より長めにするのも方法です。通常は8~12時間照射が基本ですが、14~15時間照射にすることを試してみるのも良いです。
現在はLEDライトが基本ですが、明るさのあるLEDライトであれば、照射時間を長くしなくてもコケが生え易い傾向があります。
底砂
底砂は、砂利や田砂のような物が好ましいです。理由としては、ソイルだと飼育水が酸性側に傾きやすいからです。
ブラックモーリーは酸性寄りな水は苦手なため、水のph(ペーハー)が低くなり難い底砂が良いでしょう。ただし、phを上げるサンゴ砂オンリーの水槽にする必要もありません。サンゴ砂を使うなら、部分的に使用するくらいの割合がいいでしょう。
綺麗な水草レイアウト水槽で飼育したい場合は、やはりソイルを使うことになりますが、この場合もソイルオンリーにせず、水草を植える部分だけソイルを使用し、オープンスペースは砂利や砂を使用するというのも良いでしょう。
レイアウト
水槽内レイアウトは、飼育だけを重視するならシンプルにした方が管理が楽です。繁殖まで考えるなら、水槽内に水草がそれなりの量(水槽内の3分の1~半分を水草が占める割合)になるようレイアウトすると、産まれた稚魚が生き残れるので、自然繁殖もできます。
水草をレイアウトする場合、おすすめの水草としてはウォータースプライト、アヌビアス・ナナ、ミクロソリウム・プテロプス、ミクロソリウム・ウェンディロフ、ミクロソリウム・ナロー、ウィローモスなどが、丈夫で飼育しやすい水草になります。
/ブラックモーリーの餌

ブラックモーリーは食欲旺盛で雑食性であるため、基本的には小型熱帯魚用のフレークフードを与えていれば問題ありません。
また、植物質性の餌もよく好むため、わざと水槽内にコケを生やす場所を作ったり、コケを生やした物を水槽に入れてあげてもよく食べてくれます。コケを用意してあげられない場合は、植物質性の人口餌も良い餌になります。
他には動物質性の餌として、冷凍赤虫や冷凍ミジンコなども良い餌になりますし、生きたブラインシュリンプベビーは万能の餌になります。
なるべく餌の種類がある方が栄養も偏らず、健康的に育ちやすくなるので、バラエティーに富んだメニューを用意してあげることが大事になります。
/ブラックモーリーの混泳相性
ブラックモーリーと混泳できる魚には、どんなのがあるのか見ていきましょう。
同種・近縁種との混泳

混泳は、同種・近縁種とも問題はありません。混泳に「絶対」は無いので、基本ルールである「口に入らないサイズ関係」「死に至らしめない力関係」であれば、混泳相手は何でも大丈夫です。
水質に関しては中性付近を保てば、基本的にはどんな魚種も一緒に飼えます。
ただし、交雑を問題とするならば、グッピーとの混泳はやめましょう。モーリーはグッピーとも交雑するため、混泳させると交雑する可能性が出てきます。
しかし、もしグッピーとの交雑種が産まれても、基本的には一代雑種として生殖能力を持たない魚(1世代目)が産まれてくるので、まず2世代目を産んで増える心配はありません。
他種との混泳

他種との混泳も先程の基本ルールで考えましょう。ブラックモーリーは大人しいなどと言われていますが、実際は他の魚をつついてしまう場合も少なからずあります。
一例としては、ドワーフグラミーの成魚や、エンゼルフィッシュの若魚などがバルーンモーリーにしつこくつつかれ、最悪の場合、死んでしまうこともあります。これはモーリーに限らずプラティも同じことをします。
混泳においては小さな魚心配する話が多いですが、実際は、的が大きくて(体の大きさがそれなりにあって)素早く逃げ回らない魚の方がターゲットになりやすいことも多々あります。
混泳というのは、個体の性格の他、水槽環境なども影響してきます。水槽の大きさやレイアウトによって空間スペースが違うので、魚同士がバッティングする確率や、逃げ隠れできる場所の有無などによっても混泳の可否が違ってきます。
ちなみに、貝やエビは捕食のターゲットになりやすいので、混泳の相性としては不向きです。
/ブラックモーリーの繁殖方法
ブラックモーリーは簡単に繁殖も可能です。繁殖方法について詳しく解説していきます。
雌雄の見分け方
雌雄判別は、尻ビレで判別します。最終的には、オスよりもメスの方が体が大きくなるので、そこも性差があるのですが、尻ビレが確実です。
卵胎生魚はグッピーが代表格ですが、グッピーと同じくブラックモーリーのオスの尻ビレは ゴノポジウムといわれる生殖器になっていて、普通のヒレの形とは違う棒状の形になっています。
まだ若いオスや、メス化したオスなどは、ゴノポジウムが中途半端で雌雄判別しにくい場合もあります。
ペアリング
シクリッドと違い、ブラックモーリーは夫婦形成はしないので、ペアリングというものはありません。これはペア販売されているグッピーなども同じことです。
卵胎生メダカは容易に交接・繁殖するので、単なるオスとメスを「ペア」としているというだけです。
繁殖への近道は、雌雄複数匹を健康で状態良く育成することが最重要です。栄養を十分に取って育成していれば、体が繁殖に適した状態になり、ブラックモーリーは自然と繁殖行動を起こしてくれます。
/産仔
卵胎生魚はメスのお腹の中で卵から孵化し、外に産まれてくる時には稚魚として産まれてくるので、産卵ではなく産仔といいます。
稚魚をとる場合、産仔間近のメスを産卵箱に移して産ませる方法と、水草を多く茂らせた水槽で産仔させる自然繁殖が一般的です。
おすすめは後者で、なるべく大きめの水槽で簡単な水草を多く茂らせて自然繁殖させる方法が1番手間がかかりません。
稚魚育成方法
魚の稚魚は、基本的に生きたブラインシュリンプベビーで育成します。嗜好性・栄養ともに非常に優れておりおすすめです。
しかし、これができない・やりたくないという人には、冷凍ブラインシュリンプベビーか冷凍コペポーダをおすすめします。
冷凍餌も選択肢には無いという人は、ドライのベビーフードが選択肢としては挙げられます。ドライのベビーフードにもいくつか種類がありますが、おすすめはアルテミアです。
/ブラックモーリーの病気と治療法
ブラックモーリーで気をつけておきたい病気や治療法について、見ていきましょう。
白点病
白点虫の寄生による病気ですが、白点が見えなくなっても完治したわけではないので、そこから更にダメ押しの治療を続ける必要があります。
症状:擦りつけ行動・魚体やヒレに白い小さな付着物など
治療法:0.5%塩水浴・アグテン薬浴(おすすめ)・メチレンブルー薬浴など、いずれかを2週間~1ヶ月
カラムナリス症
カラムナリス菌による病気で、基本的には感染力が強く症状の進行も早いので注意が必要な病気です。
発病部位によって「口ぐされ病」や「尾ぐされ病」などと言われたりもします。卵胎生魚の仲間で発生する強烈な感染症には、感染から3日で全滅することもあります。
症状:体表粘膜や目やヒレの白濁・ヒレを閉じる・口やヒレが裂けたり溶けたりするなど
治療法:0.5%塩水浴(感染から3日で全滅する卵胎生メダカの強烈な感染症におすすめ)・グリーンFゴールド薬浴(おすすめ)・エルバージュ薬浴など、いずれかを2週間~1ヶ月
エロモナス症
エロモナス菌による病気で、病魚からの感染というよりは環境病(水質悪化などによって引き起こされる)みたいなものなので、同じ水槽にいる魚は発病する可能性があります。
松かさ病などと言われる病気もエロモナス症のことです。
症状:ポップアイ(眼球突出)・立鱗(まつかさ)・腹水・出血など
治療法:0.5%塩水浴・エルバージュ薬浴(おすすめ)・グリーンFゴールド薬浴・グリーンFリキッド薬浴・歓パラD薬浴
低ph障害
ブラックモーリーをはじめとした卵胎生メダカは低phに弱いため、他の魚種が大丈夫なph値でもカラムナリス症に罹ったような症状を見せます。
初心者にはカラムナリス症と低ph障害の判断が難しいところもあります。
症状:不活性化(水底や水面に力なく黙る)・ヒレを閉じる・ヒレが溶ける・目やヒレや体表粘膜の白濁など
治療法:ph値を正常な値に戻すことが必要です。急なph変動で魚にショックを与えないよう、時間をかけての水換えが基本ですが、水換えの際にテトラ アクアセイフのような粘膜保護剤を使うと良いです。
普段から予防的にテトラ PH/KHプラスのような物を使うのもアリです。ph測定器、または、最低でも試薬や試験紙は常備しておきたいところです。
ブラックモーリーを飼育してみよう!

ブラックモーリーはポピュラーな魚種なのに、意外と飼いにくいところのある熱帯魚ですが、1度体調が安定して、コツをおさえた飼育さえできれば、飼い易く感じる熱帯魚です。
卵胎生魚ということから、飼育者に魚の繁殖の面白さを教えてくれる存在でもありますね。ぜひ飼育してみてください。