
オトシンクルスの繁殖方法まとめ!ペアリングから稚魚の育成まで完全網羅
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オトシンクルスの繁殖って難しい?

ポピュラーな観賞魚の中には繁殖例を聞かないような魚が少なからずいるものですが、その中の1つがオトシンクルスです。オトシンクルスはどちらかというと、繁殖が難しい熱帯魚になると思います。
しかし、そうは言ってもオトシンクルスは全く繁殖例が無いわけではないので、興味のある方はオトシンクルスの繁殖に挑戦してみるのもアクアリウムの醍醐味の一つです。
今回はそんなオトシンクルスを繁殖させてみたい人向けに、アクアショップ店長の私が、繁殖方法を詳しく解説していきます。
/オトシンクルスの繁殖〜準備編〜

まずはオトシンクルスの繁殖をさせるにあたっての準備について解説していきます。
繁殖に必要な環境
オトシンクルスだからといって特別に必要なものはありません。水槽・照明・フィルターなど、魚の飼育・繁殖に必要なものは共通しています。
水槽は30㎝水槽からでも繁殖可能ですが、オトシンクルスにストレスがかかりにくいという点は重要なので、その点で言えば 水槽は大きい方が良いです。
しかし、稚魚が産まれた後の管理を考えると水槽は大きすぎない方が管理をしやすいのですが、このあたりのことはご自身の自宅環境でも考えてください。静かな環境であれば小さな水槽でもストレスはかかりにくいですし、幼いお子さんがいる環境などでは水槽を高い位置に設置してオトシンクルスにストレスがかからないようにしましょう。
また、水槽サイズが大きければオトシンクルスが隠れて休めるスペースが沢山できるなどのメリットがあります。フィルターは他にもメインフィルターを設置する場合も、スポンジフィルターだけは必ず設置しましょう。
ブラインシュリンプなど細かい餌を使用する繁殖水槽ではスポンジフィルターは鉄板です。水温・水質はとりあえず25℃前後・中性前後、底砂の有無はどちらでもかまいません。照明は規則正しく8~12時間点灯にしましょう。
あった方がいい物
オトシンクルスの繁殖を狙う際、あった方がいい物としては 水草・流木・マジックリーフなどがあります。水草はレイアウトしてあれば、それはそれでオトシンクルス的にはより自然に近い感覚になって良いことですし、繁殖水槽用にシンプルに水草を配置するのも良いです。
シンプルに配置するというのは、例えば、流木に水草を活着させて設置するなどです。このようにすれば、その活着水草は自由に移動させることができるので、観察しやすいような配置にする場合や、魚本位になって考えてのレイアウトの変更・工夫などが、いつでもすぐにできます。
流木はオトシンクルスの隠れ家や生活の場にもなりますし、流木から染み出る有機酸による水質の適正化などのメリットも期待できます。有機酸の点で言えばマジックリーフも同じです。マジックリーフは水質作りのメリットの他に、マジックリーフ自体が餌になるというメリットもあるので、ぜひ水槽に入れるようにしてください。
また、照明の規則正しい管理にはタイマーを使いましょう。
/雌雄判別の方法
これは全ての魚に共通することですが、成魚を見て何かしらの差異が無いか観察することが基本です。
体型や体格の違い
ヒレの形や大きさの違い
色模様の違い
肛門の形や大きさの違い(輸精管や輸卵管の違い)
生殖器の有無
ただし、上記の特徴は見比べる対象が必要なので、ちゃんと雌雄がそろうように、それなりの匹数を飼育するのがポイントです。雌雄判別が難しい魚種であれば最低5匹、5匹では心もとないので出来れば10匹いれば良いと思います。さてここからはオトシンクルスの場合ですが、成魚であれば体型や体格の違いで判別できます。
メスに比べて、体がスレンダー
オスに比べて、お腹に膨らみや丸みがある
メスはお腹に膨らみや丸みがあって、そのぶん体格も大きく見えやすいです。オスはスレンダーな体型をしているのですが、オトシンクルスの雌雄判別の時は、横からだけではなく上からも観察すると、より判別しやすいのでおすすめです。
雌雄の数は同数や、どちらかを多くしたりして試せるよう、できれば1ペアではなく複数のオトシンクルスを用意すると良いでしょう。
/オトシンクルスの繁殖〜実践編〜

繁殖準備が整ったら、次はいよいよ実践です。どんなポイントに気をつけたらいいのか、まとめました。
まずは親魚作りから
繁殖を狙うのであれば、どんな魚も親魚作りから始めなければいけません。どういうことかというと、要は「飼い込む」ということです。たまたま飼い込まれたオトシンクルスを購入することができれば、繁殖までの道のりは楽になるかもしれないのですが、そうではない場合は飼い込んで、繁殖可能な成魚に育て上げなければならないのです。
親魚としての体ができていないのに、例えばメスは卵すらお腹に持っていないのに、繁殖させようとして水質や水温など環境の工夫をいくらしたところで産卵には至りません。餌は植 物質の餌ばかりでなく動物質の餌も与えるようにして、十分な栄養をとらせることがポイントです。
そうやって親魚としての体ができれば、魚の方が勝手に繁殖をしたくなります。オトシンクルスもこの点が大事で、最低限この点をクリアーしないと繁殖はできません。繁殖を促すための小技などを使うなら、まずは親魚の体作りをクリアしないといけません。
オスがメスを追い回すようになる
オトシンクルスをひたすら飼い込んでいると、雌雄の差異がより明確になってきます。例えば、メスは餌を与えていない時間にも関わらず、お腹がふっくらしていたり、卵でパンパンのお腹になったりします。
そのようなメスが出てくると、繁殖を意識するオスも現れてきます。するとある日、それまで見られなかった光景が見られるようになります。
具体的には、産卵を促すためにオスがメスを執拗に追い回すようになります。この変化は、普段の何でもない様子をちゃんと観察している飼育者であれば気づくはずです。オスがメスを追いかけ回す時は必ずしも1対1とは限らず、1匹のメスに対して複数のオスが追いかけ回す場合もあります。
オスが執拗にメスを追いかけながらも、オスがメスの体を舐め回すような行動も見せます。このような様子が見られるようになったら、もう産卵は間近です。
産卵
メスは、オスに執拗に追い回されたり体を舐め回されたりしながらも、水槽内を移動します。そうこうしているうちに、よく観察しているとオトシンクルスもコリドラスの繁殖の際に見られるような「Tポジション」を見せるようになります。
オトシンクルスの場合は、コリドラスのTポジションと少し違って、オスは体を湾曲させるような姿勢をとります。この時、ビタッと数秒の間オスとメスの動きが止まります。
移動しながらそのような行動を繰り返し見せ、主に水草などに卵を産み付けます。一通り産卵が終わったと判断したら、食卵されないよう、卵と親魚を別々に隔離します。
この場合、産卵した水槽から卵を取り出して移動させる方法と、親魚を取り出して移動させる方法の2通りの方法があります。前者の場合は、コリドラスの卵の人工孵化を参考にしてください。
後者の場合は、オトシンクルスの卵を食べてしまうような他の生物、例えば貝やエビがいないようにしましょう。
/オトシンクルスの繁殖〜育成編〜

撮影:FISH PARADISE!編集部
無事に繁殖が成功したら、次に待ち構えているのは稚魚の育成です。
卵の管理
産卵水槽でそのまま卵を孵化させる場合は、特にすることはありません。産卵からそのまま5~7日後に稚魚が泳ぎ出すまで待ちましょう。
卵を移動させて孵化させる場合、孵化水槽に入れる水はカルキ抜きしない適温の水にするか(アグテンなど魚病薬も入れて良い)、カルキ抜きした水にアグテンなどの魚病薬を薄っすらと色付く程度入れましょう。そのようにすることで卵がカビてしまうことを防ぐことができます。
ただし、これは卵の時だけにしておいてください。卵自体は強いので、このようなやり方でダメになることを防げるのです。孵化は2~3日程度でするので、孵化後は水換えも魚病薬の投入もしないようにしましょう。
稚魚の管理
孵化した稚魚はすぐには泳ぎ出しません。最初はお腹にある栄養袋(ヨークサック)で育ちます。産卵日から5~7日後にはヨークサックが無くなって稚魚が泳ぎ出すので、その頃には稚魚の餌がすでにあるように用意しておきましょう。
生きたブラインシュリンプは孵化させるのに1日程度かかるので、まえもってセットしておくことがポイントです。あとはマジックリーフも餌になるので入れておきましょう。
あらかじめマジックリーフを入れておくと、軟らかくなって稚魚が食べやすくなるので、前もって用意してきましょう。より小さな餌として、インフゾリアやワムシなどを用意するのも良いです。あとはPSBを利用するのも効果的です。
水質管理
稚魚期は下手な水換えというか、下手に水換えをすると失敗することも多いので、 水換えはしない方がベターだと思います。水が生臭くなった場合やpHなどの水質が極端になってきそうな場合は、やむを得ず水換えをするか、水質を改善するコンディショナーを使って水換えをしないでやり過ごすようにします。
水換えする場合は、必ず一晩汲み置いた水(溜め水)を使用しましょう。その際、テトラ アクアセイフも使用すると、なお良いです。換える水の量が多い場合はアクアセイフを使用し、換える水の量が少ない場合はイージーバランスを使用するなど使い分けるのがおすすめです。イージーバランスの場合、水の濁りも改善してくれるので、他の同様の商品との使い分けを考える場合の参考にしてください。
稚魚の餌
餌については先程も触れましたが、生きたブラインシュリンプは魚の繁殖の際の餌としては基本です。オトシンクルスの場合、 マジックリーフも用意しておきましょう。
小さな稚魚の餌としては、他にインフゾリアやワムシ、PSBなどがよく使用されます。ちなみに、ベトナム産のブラインシュリンプであれば、通常のブラインシュリンプよりも小型だと言われているので、入手できるようならそれも良いでしょう。
おすすめのやり方としては、メインの餌を与えつつの話ですが、稚魚が大きくなってきたら切り替えていきたい餌を、最初から匂い付け程度の量をごく少量与えるようにして、餌として認識させて慣らす作業も同時に行うことです。
これをすることによって餌の切り替えがスムーズにできますし、早くからドライフードに慣らすことも可能になります。
オトシンクルスの繁殖を楽しもう!

今回はオトシンクルスの繁殖についてでしたが、そもそも繁殖例の少ない魚なので、まずは過程を楽しみながら最終的に結果に結びついてくれたら万々歳というような感じで、気長に楽しむのが良いかもしれません。
オトシンクルスに近い仲間で、オトシンネグロの方は繁殖をさせやすいですし、コリドラスなんかの繁殖を参考にするのも良いと思いますよ。楽しんでください。