
塩浴(塩水浴)の効果と方法!塩で病気が治るって本当!?
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アイキャッチ画像撮影:FISH PARADISE!編集部
撮影:FISH PARADISE!編集部
塩浴とは、 塩分を含んだ水(えんすい)の中に淡水魚を入れることで、魚のケアをするテクニックです。淡水魚を塩水に入れることは、危険だと思う方も居るかもしれません。確かに、塩水の濃度を間違えるとかえって弱らせてしまうのですが、濃度が適切であれば様々なメリットを得られるのです。
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塩浴を行うことで魚にとって様々なメリットが得られます。ここでは、塩浴の具体的な効果についてご紹介します。
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塩浴は便利な魚のケア方法ではあるのですが、盲目的に利用することは危険です。ここでは、塩浴のメリットとデメリットをご紹介します。
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塩浴は魚の健康に役立ちますが、使用する塩に注意しないとかえって弱らせてしまいます。ここでは、塩浴に使用する塩について説明します。
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基本は塩水に魚を入れるだけなのですが、正しい手順を踏まないと魚を弱らせてしまいます。ここでは、塩浴の方法を具体的にご紹介していきます。
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ベストな期間は塩浴を行う目的によって異なってきます。新しく入手した個体を本水槽に導入する前に、病気の有無の確認や体調を整えさせる目的で行うトリートメントであれば、病気の潜伏期間を考慮して 1週間前後がベストだと言われています。
しかし、病気を治療する目的で、塩浴単体または薬浴と並行して行う場合は、治るまで続けるべきです。
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塩浴は魚の浸透圧調節を補助し、体力を回復させてあげることが可能です。特に、入手直後の魚は輸送などのストレスで弱っていることが多く、そのまま本水槽に導入すると病気にかかってしまうこともあるため、隔離水槽で塩浴を経てから入れると安全です。
病気になってしまった時も、初期の段階であれば塩浴だけで治癒するケースもあり、魚病薬を用いるよりも魚の負担を和らげることが可能です。ぜひ、塩浴を上手に利用して魚の健康に役立ててあげてください。
塩浴(塩水浴)とは

塩浴の効果

魚の浸透圧調整の補助
濃度が異なる2つの溶液を浸透膜(水分子以下の大きさの物質は通すが、それよりも大きい物質は通さない膜)で仕切ると、濃度を一定にしようとする力が発生し、水分子が濃度の高いほうに移動しようとします。この水分子が移動する力を 浸透圧と言い、魚をはじめ多くの生物は細胞膜が浸透膜の役割を果たしています。 そのため、淡水魚は常に体内に水が浸透してくる力に晒されており、実際に水が流入してきます。そのままでは、体を正常な状態で保てないため、余分な水分を排出し続けており、この働きを浸透圧調節と言います。 浸透圧調節を行うにあたり魚は一定の体力を使用しているため、 魚の体液と同等の濃度に調節した塩水に入れることで浸透圧の発生を抑制し、体力を温存させてあげることが可能になるのです。病気の予防・治療
魚も私たち同様、ストレスなどで免疫力が低下すると病気に罹患するリスクが上昇します。そのため、購入直後の個体などは本水槽に導入する前に、別の水槽を用いて塩浴させてあげると、上記の浸透圧調節の負担などが軽減されてストレス解消に役立ち、ひいては病気予防につながります。 また、病原体の細胞中の塩類濃度は、魚のそれよりも一般的に低いと言われています。よって、塩浴を行うことで病原体は脱水状態に陥って殺菌され、一定の病気の治療効果も得られます。塩浴のメリット・デメリット

塩浴のメリット①:手軽に行うことができる
塩浴は、基本的には適正濃度になるよう塩類を溶かした水に魚を入れれば行えるので、家庭でも手軽に実施が可能です。詳しくは後述しますが、水に溶かす塩は食塩でも良いため、急な体調不良にも対応できる効果的な手段になり得ます。 病気の初期段階であれば塩浴だけで治癒することもあるので、同手法は覚えておくと良いでしょう。塩浴のメリット②:薬浴と併用することで治癒力が上がる
塩浴は薬浴と併用することが可能で、そうすることで治癒能力の向上が望めます。前述のように、魚は浸透圧の調節で常に一定の体力を消耗している状態にあります。そこを塩浴によって補助してあげれば、魚は病気からの回復に専念することが可能になるからです。 また、病原体によって傷つけられた体組織は、結局は魚が自身で修復しなければ治癒しないため、それを促進する意味もあります。塩浴のメリット③pHの調整にも使える
塩にも色々な種類があり、中には水に溶けるとpHを変化させる物もあります。例としては、人工海水の素が挙げられます。人工海水の素は、通常の用途のために作るとpH8前後になりますが、塩浴用の塩としても使用可能です。 もちろん、その濃度の人工海水は淡水魚の塩浴に使用するには濃すぎるため、かなり薄く作らなければなりませんが、魚しか飼育していない水槽であれば塩浴と同時にpH調整も可能です。塩浴のデメリット①:水草に影響が出る
水草は一般的に塩分に弱いため、魚と一緒に塩浴させると枯れてしまうことがほとんどです。そのため、塩浴を行いたい場合は、基本的に当該魚を別の水槽に隔離して行いましょう。 また、エビ類などの水質の変化に敏感な生物も水草と同様、塩浴させると死亡する危険性が高いので注意してください。塩浴のデメリット②:塩抜き作業が必要になる
魚の体調が整うなどして塩浴を終える場合、塩分を飼育水から除去する塩抜き作業を行わなければなりません。ただ、この作業が大変で、塩抜きを行うには水換えをする他に手段がないのですが、水質の急変を避けて魚への負担を和らげるためには、通常時と同様に時間をおいて少しづつ換水する必要があります。 この手間を省くためにも、塩浴を行うときは本水槽とは別の水槽で実施することをおすすめします。塩浴に使う塩はどんな種類がいい?

アクアリウム用の塩が使いやすくておすすめ
現在では、塩浴用に使用する塩も市販されているので、それを使用するのがおすすめです。アクアリウム用に販売されている塩は、魚の健康に有利に働くミネラルが豊富に含まれた物や、簡単に規定濃度の塩水を作れる物などがあるので手軽かつ便利です。食塩も使用可能
塩浴に使用する塩は食塩でも構いません。ただし、食塩を使用する際は、塩化ナトリウムの純度に注意してください。それから、塩分以外の添加物についても、合わせてチェックする必要があります。 一部の天然塩や粗塩は不純物の量が多く、塩浴用の塩として使用するとその不純物が魚に悪影響を及ぼす恐れがあると言われています。また、食塩の中にはアミノ酸などが添加されている商品もあり、そのような物も塩浴には適していません。ちなみに、エプソムソルトって何?
エプソムソルトとは欧米を中心に入浴剤として利用されている塩で、主成分は硫酸マグネシウムです。硫酸マグネシウムは温泉に含有されている成分で、入浴剤として使用すると体がより温まるなどの効果を得られると言われています。 魚の塩浴用の塩としても使用可能で、近年特に欧米圏で人気を博しています。ただし、同塩を使用した塩浴法は、いまだ知見が少ない点に注意してください。塩化ナトリウムを主成分とする塩よりも効能が強いらしく、同程度の濃度で塩浴を行い失敗する例も散見されています。塩浴の方法

塩の量の計算方法
塩浴を行う上で最も重要と言えるのが、適切な濃度の塩水を用意できるかです。 塩浴に適した塩類濃度は0.5%が基本とされており、この濃度は水1Lに塩5gを溶かした時の数値です。水の量が増えれば塩の量もそれに比例して増加し、水10Lであれば50g、水100Lであれば500gとなります。 意外と大量の塩が必要になるので、やはり塩浴を行う際は別途に小型の水槽を用意しておいたほうが良いでしょう。塩の入れ方
環境への適応力が高い丈夫な魚でも、水質の急変には対応できないことがほとんどです。塩浴についても同様で、適正濃度とはいえ、塩を一度に溶かしてしまうと水質が急変し、かえって弱らせてしまうことがあるので注意してください。 特に、塩浴が必要な時は衰弱している場合が多いためなおさらです。塩を入れる時は、時間をかけて複数回に分けて入れてください。アクアリウム用の塩の中には結晶状やタブレット状に成形し、一気に溶け出さないようにしている物もあるので、そのような商品も便利です。塩浴の期間はどれくらいがベスト?

常に塩水で飼育するのはアリorナシ?
ここまでのことから、常に塩水で飼育すれば良いのでは、という発想を持つ方も居るかもしれません。しかし、それはあまりおすすめできません。なぜなら、常に塩水で飼育することはデメリットも大きいからです。 まず、魚は水の体内への流入を少しでも防ぐために粘膜によって防御をしているのですが、塩水で飼育し続けると、その機能を維持する必要性が低下して粘膜が薄くなる傾向にあります。すると、いざ淡水に戻した時に浸透圧調節が大きな負担となる恐れがあるのです。また、粘膜が薄くなると病原体に対する耐性も低下してしまいます。 次に、病気になってしまった時に、採ることができる対処法が減ることもデメリットに挙げられます。塩水で飼育していても病気になることがあり、その場合は治癒力をあげる手段が1つ丸々失われることを意味します。 常時塩水で飼育したい場合、これらのデメリットを理解したうえで行ってください。塩浴で治すことができる病気・治すことが難しい病気
塩浴が治療に有効である場合とそうではない場合について、詳しく解説していきます。治せる病気
各種魚病の初期状態 病原体の中には水中に常在しているタイプも存在します。そのような状態でも魚が病気にならないのは、魚の免疫力が正常に働いているからです。そのため、病気の初期段階であれば、塩浴で体調を整えさせて免疫力を正常に戻してあげれば、魚の免疫力だけで病原体を撃退することも可能です。 魚の体表に異常が出る病気 塩浴は飼育水を塩の効果で殺菌することで病気を治す側面も持つので、魚の体表で発病する性質の病気には一定の効果が望めます。例としては、 白点病や尾ぐされ病、ギロダクチルス・ダクチロギルス症、水カビ病などです。 ただし、これらの病気も進行してしまうと塩浴だけでは治癒が望めなくなるので、いつでも薬浴が行えるよう準備をしておいてください。治療が困難な病気
体内で発病する病気 塩浴の性質上、体内で発病するものについてはどうしても効果が薄くなってしまいます。一例としては、 運動性エロモナス症が挙げられます。この病気の症状として、松かさ病やポップアイ、腹水病などがあり、これらは魚の体内で病原菌が増殖した結果として現れる病状であるため、塩浴のみでの治癒は困難です。 塩浴を開始しても症状の改善が見られない場合、速やかに薬浴を行ったほうが良いでしょう。塩水浴によるバクテリアへの影響
塩には殺菌効果があると述べました。この効果はバクテリア(硝化菌)に対しても発揮される点に注意してください。フィルターなどにろ過に必要なバクテリアが十分に定着した水槽で塩浴を行うと、せっかくのバクテリアが死滅してしまい水質が不安定になる危険があるのです。 塩浴を行う場合に、再三にわたって別水槽での隔離をおすすめしている理由の1つでもあります。このことから、塩浴を行う時は基本的にはフィルターを設置しません。また、魚が弱っていたりストレスを抱えている状況から、消化不良を防ぐために餌も与えないことが基本です。塩浴が長期化しそうな時はごく少量を与え、食べ残した場合は速やかに取り除く必要があります。 塩水はバクテリアがほぼ活動できない環境になり、アンモニアなどの有害物質が分解されづらくなるため、小まめな換水が要求されることも覚えておいてください。塩浴を上手に利用して魚の健康に役立てよう!
